Event report

2020.3.12

ファッション業界におけるサステナビリティとは何か?

Material Meetup TOKYO vol.7 レポート

2019年11月13日に開催されたMaterial Meetup TOKYO vol.7のテーマは「ファッションとサステナビリティ」。石油業界に次ぎ2番目に環境を汚染していると言われるファッション業界ですが、現在、多くのファッションデザイナーや素材メーカー、ファッショニスタが、サステナブル社会の実現へと動き始めています。国内外の新たな流れをいち早くキャッチアップする人たちが参加したイベントのアフターレポートをお楽しみください。

Material Meetup TOKYO vol.7のオーガナイザーは、MTRL プロデューサーの井田幸希とFabCafe グローバル コミュニケーションコーディネーターのケルシー・スチュワート。通訳はFabCafe 野村善文。立ち見が出るほど多くの人が詰め掛けた会場を盛り上げながらMTRLの紹介をし、ファッション業界がサステナビリティを意識するべき理由を説明しました。

ファッション業界にサステナビリティの大切さを訴え続けてきたパイオニア

最初にマイクを持ったのは、2014年に「サンフランシスコ サステナブル ファッションウィーク インターナショナル(以下 SFSFWI)」を設立し、運営もするサンドラ・ハンスさん。サステナビリティを意識するようになったファッション業界をつくりだそうと真っ先に動き始めたパイオニアでもあります。

彼女は一人ひとりに語りかけるような優しい口調で、SFSFWIを設立した理由と存在意義について教えてくれました。

「今でこそアースデイにファッションブランドが協力するのは当たり前になっていますが、ほんの数年前まで彼らは全く興味を示していませんでした。だから、SFSFWIを設立することにしたのです。
当時は、ファッション業界のあり方、例えば、生産過程で排出する大量の水や生地の切れ端がそのまま捨てられていること、それらが環境汚染につながっているという意識が薄かったのです。でも、それではいけませんよね? 消費者にだって責任はありますが、それよりも製造者側はもっと大きな責任があります。
SFSFWIはファッション業界に身を置く関係者にサステナビリティの大切さを伝えるプラットフォームでもあります」

アメリカでサステナブルなファッションをリードしている「SFSFWI」でも、このような背景があったことを知っている人は少ないかもしれなません。ファッション業界にサステナビリティの大切さを訴え続けるサンドラさんは話を続けます。

「サステナビリティを実現することはとても大変ですが、決して不可能なことではありません。難しいのは承知の上ですが、大きく分けると4つの改善が必要となるでしょう。
比較的進んでいるかもしれませんが、まずは農薬の不使用。それに環境に優しい生地の開発と使わない生地をなくすという試みが必要となります。そして、いつも少し驚かれるのですが労働環境の改善も結果的にサステナリビティにつながります」

ほとんどのファッションブランドがサステナビリティを意識していなかった時代にもかかわらず、それがいかに重要なのかを訴え続けてきた結果、今や「環境を気にかけないブランド=イケてないブランド」と考えられるように。サンドラさん、ひいてはSFSFWIの活動が、少なからず現在のファッション業界のあり方に影響を与えているのでしょう。

同じものを長く穿き続ける、それもサステナビリティを実現する方法

2番目のスピーカーは、広島県備後地方で作られるデニムを尾道で働く人々が実際に1年間穿き続けて、ユーズドデニムを育てる「尾道デニムプロジェクト」に携わる壇上幸伸さん。意外なところから話は始まりました。

「実は僕たちはサステナビリティを意識してというわけではなく、株式会社で街おこしをするという考えのもと尾道デニムプロジェクトを始めました」

正直にありのままに話をしてくれる壇上さんのこのような姿勢も、サステナビリティを実現する「透明性」という重要な鍵のひとつかもしれません。

「尾道デニムプロジェクトのデニムは、あえてビンテージ加工をしていません。2週間から4週間でビンテージ加工をする技術があるのに、あえてそれをやらずに1年かけるのが僕たちのプロジェクトです。
尾道で働く、漁師や農家、保育士といった人たちに穿いてもらって、それを回収して、洗って、また穿いてもらう。この工程を1年続けたら『本物』のリアルユーズドのデニムが仕上がります。それは世界にたったひとつのデニムでもあります。
僕たちのデニムを購入した人は、おそらくストーリーに共感してくれた人たち。だから、毎シーズン、デニムを買うのではなく、尾道で使われたデニムを大切にずっと穿き続けてくれるはずです」

尾道デニムプロジェクトが体現しているのは、使い方におけるサステナビリティ。すぐに新しいものを買うのではなく、同じものをなるべく長く使い続けるという方法です。

そして、壇上さんはこう締めくくりました。

「これまでにもエコ文脈で、環境を気にかける動きがありました。ですが、悲しいことにトレンドとなってしまい文化として定着することはありませんでした。
でも、今回のサステナビリティの流れは違うと思います。LVMHがステラ・マッカートニーと提携するなど、サステナビリティに対する本気度が様々なことから伺えます。
尾道デニムプロジェクトは、他のブランドとは違うアプローチでこのサステナビリティの流れに貢献できればいいなと思っています」

最先端テクノロジーでサステナビリティを実現する

最後は、カスタムジーンズをオンデマンドで製造しているアパレル企業「unspun」の共同設立者であるウォールデン・ラムさん。「人の行動により排出される二酸化炭素を減らす」ということを軸にしていると話した上で、「でも、日本に来るために飛行機を使って、たくさん二酸化炭素を排出しちゃったんだよね」というジョークで会場にいる人の心を掴み、話を始めました。

「僕たちが取り組んでいるのは製造工程を変えることです。具体的に言えば、アパレルから消費者に洋服を提供するだけという一方通行のコミュニケーションではなく、消費者が欲しいものをつくり、それをアパレルが提供するという両方向のコミュニケーションを実現させています。
体のサイズを3Dスキャナーで測ってから、その人の身体にぴったりのデニムを製造しているのです。いわゆる、オーダーメイドですね。製造のためのソフトウェアとハードウェア、どちらも自分たちで開発をしていて、デニム生地の無駄と在庫から発生するロスをなくすことに成功しました」

テクノロジーを利用して、サステナビリティを実現する「unspun」。ウォールデンさんによれば、お店のあり方も変わってきているといいます。

「お店に来る人は、洋服を選ぶのが当たり前でしょう。でも、僕たちの場合は違います。より消費者の好みに合わせられるように様々なカスタマイズをする場所になっているのです。
これは、コミュニケーションが生まれているだけでなく、長くデニムを使い続けてくれているということを意味しています」

そして、ウォールデンさんたちは、消費者のことだけでなくリサイクル業者のことまで考えています。
「今度発表するのですが、僕たちは熱で溶ける『糸』を開発しました。これを使うことで、リサイクルをする際にハサミなどで切っていた作業をなくすことができるのです。しかも、ゴミも出ません」
最先端テクノロジーを使い様々なアプローチをして、サステナビリティを実現する「unspun」には、これからより多くの注目が集まることでしょう。

マテリアル(素材)のミニプレゼンテーション

3人のメインスピーカーを迎えたMaterial Meetup TOKYO vol.7。これで終わりではなく、2つのマテリアルのミニプレゼンテーションもおこなわれました。

エシカルバンブー株式会社

「弊社は、竹を使った製品をつくり、タオルや洗剤、ミストなどを展開しています。一番ご紹介したい竹の繊維を使ったタオルは、素晴らしい触り心地を持っているだけでなく1ヶ月で分解できるのです」

YKKスナップファスナー株式会社

「YKKと聞くとジッパーを想像するかもしれませんが、スナップ・ボタンも手がけています。なぜこのような話をするのかというと、スナップ・ボタンがサステナビリティを体現している製品のひとつでもあるからです。過去には、生産活動に従事する労働者や金属アレルギーを持つユーザーに健康リスクの高いニッケルを使用していましたが、環境と身体にやさしいノンニッケルメッキの開発に成功し、エコテックス®スタンダード100を取得しています」

Material Meetup とは

Material Meetup は、「素材」をテーマに、ものづくりに携わるメーカー、職人、クリエイターが集まるミートアップ。

  • 新しい領域でのニーズや可能性を探している、「素材を開発する」人
  • オンリーワンの加工技術をもつ、「素材を加工する」人
  • 持続可能な社会を目指して、「素材を研究する」人
  • 機能や質感、意匠性など、複合的なデザインを行ううえで様々なマテリアルを求めている、「素材からデザインする」人

…そんな人々が「デザインとテクノロジー」そして「社会とマテリアル」の観点から、業界の垣根を超えてオープンに交流し、新たなプロジェクトの発火点をつくりだす機会を継続的に開催しています。

カタログスペックだけではわからない素材の特性や魅力を知り、その素材が活用されうる新たな場面(シーン)を皆で考える。「素材」を核に、領域横断のコラボレーションやプロジェクトの種が同時多発する場。それが Material Meetup です。

2018年のスタート以降、東京・京都の各拠点ごとに、それぞれ異なるテーマを設け継続開催しています。

■ Material Meetup 過去開催情報:https://mtrl.com/projects/material-meetup/

Author

  • FabCafe編集部

    FabCafe PRチームを中心に作成した記事です。

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