Column

2018.10.3

脳を揺さぶる香り:香りから辿るパーソナリティ。フェロモンの実態とは?(前編)

嗅覚デザインラボ / OLFACTORY DESIGN LAB

「嗅覚デザイン」の可能性を探求するワークグループ「OLFACTORY DESIGN LAB(嗅覚デザインラボ)」、8月30日に開催された第二回目のテーマは「Brain-shaking pheromones(脳を揺さぶるフェロモン)」。フェロモンの定義から香りとパーソナリティの結びつきまでを、『源氏物語』を手がかりに紐解いていきました。
第一部の嗅覚アートの先駆者 MAKI UEDAさんによる調香ワークショップとレクチャー、第二部の東京大学大学院 農学生命科学研究科教授である東原和成先生をお招きしたトークイベントの様子を、前編・後編に渡ってレポートします。

Olfactory Design Lab

プログラム

第一部:ワークショップ&レクチャー(16:30-18:30)
源氏物語の女人たちの香りを嗅ぎ、自分のパーソナリティを表す「匂い袋」を調香する

  • インスタレーション体験(30分)
    「源氏物語の登場人物のパーソナリティを香りでイメージする」
    源氏の女人の香り〜匂い袋の調香ワークショップ〜(90分)

第二部:トークセッション&レクチャー(19:30-22:00)
「フェロモンの正体は?私たちのパーソナリティと香りの関係」

  • オープニングトーク、ゲスト紹介
  • クロストーク「エロスとフェロモン、香りとパーソナリティー」
  • Q&A
  • 懇親会

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第一部:ワークショップ&レクチャー
源氏物語の女人たちの香りを嗅ぎ、自分のパーソナリティを表す「匂い袋」を調香する

第一部では、中宮彰子に使えた紫式部が平安貴族の優雅な暮らしと主人公・光源氏の恋愛を魅力的に描いた物語、『源氏物語』第三十二帖 梅枝に出てくる5つの香りを体験。この章は源氏が実の娘・明石の姫君の入内に際し、4人の女性(紫の上、朝顔の宮、花散里、明石の君)にお香を作らせ競わせたというお話。風流な暮らしと人を好む源氏らしいエピソードです。

平安時代には、香を部屋にたき込めたり(空薫)衣装にたきしめて、香りを楽しむ文化が貴族たちの間で広まりました。代表的な香には伝統的な処方(=レシピ)がありましたが、そのアレンジには家ごとに代々受け継がれている家宝のような処方があったたそう。
当時の男女は御簾ごしの会話が基本で視覚情報が限られていたこともあり、人と香りの関係は現代以上に切っても切り離せないものだったようです。

インスタレーション体験では、源氏ゆかりの女人たちが贈った香り「黒方」「梅花」「侍従」「荷葉」「薫衣」を体験。それぞれの香りの違いはもちろんですが、練香の状態と焚いた状態での違いも楽しみます。

「黒方」はめでたい香りで季節に例えると冬、「梅花」なら春で紫の上を象徴する香り……など、香りは様々な意味合いを持っています

 

今回のワークショップでは、「沈香(じんこう)」や「白檀」などの成分を使い、『香と仏教』(有賀要延著)の処方を参考に調香した香りで匂い袋をつくりました。私達の身の回りにある香水やシャンプー、柔軟剤などとは違った和風な香りで、どこか懐かしい気持ちになります。

香水は1日の中で香りの変化を楽しみますが、香り袋は翌日、1週間後、1ヶ月後……と、より長い時間をかけて香りの変化を楽しめるのが特徴です。携行するもよし、クローゼットに仕込むもよし。

まずは調香用の香料の匂いの印象をメモしていきます。沈香は如何にも和室!という印象の香り。

自分の嗅覚を頼りに、理想の香を作るべく調香していきます。
仕上げにムスクを数滴たらすと、香りの持ちがよくなるそう。

匂いの元を棉と布でつつんで、完成!
源氏の作った「侍従」をイメージして調香した参加者に匂いを嗅がせてもらったところ、とても爽やかな香りでした。使う香料が同じでも、ほんの少しの処方の違いで香りの印象はがらりと変わります。

ワークショップからちょうど1ヶ月ほど経ち、ワークショップに参加した皆様は今ごろ香りの変化を楽しんでいるころでしょうか。「香料は高価で手が出せない」とお思いの方もいると思いますが、ヨーロッパ版香り袋「サシェ」は安価かつ簡単な処方がネットで検索できるので、これを機に「自分を表現する香りを作る」のも楽しいかもしれません。

後編では、東京大学大学院 農学生命科学研究科教授である東原和成先生をお呼びしたトークイベントの様子をレポートします。(後編レポートはこちら

 

嗅覚デザインラボ(OLFACTORY DESIGN LAB)

「嗅覚デザインラボ」は、ロフトワーク / FabCafe MTRLとMAKI UEDAのコラボレーションで生まれた嗅覚のための実験場です。新しいコミュニケーション・ツールとしての「嗅覚」をデザインするプロジェクトで、3ヶ月に1回ペースでの開催を予定しています。次回の開催日時や概要は、決まり次第FabCafe MTRL イベントページよりお知らせします。

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  • 嗅覚デザインラボ / OLFACTORY DESIGN LAB

    「嗅覚デザインラボ」は、嗅覚のための実験場です。新しいコミュニケーション・ツールとしての「嗅覚」をデザインします。素材がテーマのプロトタイピング/プロジェクトスペース「FabCafe MTRL」(FabCafe Tokyo 2F)にて開催します。

    嗅覚デザインラボ紹介ページ

    「嗅覚デザインラボ」は、嗅覚のための実験場です。新しいコミュニケーション・ツールとしての「嗅覚」をデザインします。素材がテーマのプロトタイピング/プロジェクトスペース「FabCafe MTRL」(FabCafe Tokyo 2F)にて開催します。

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