Column

2020.4.13

FabCafe Bangkokが医療現場と向き合うコロナ対策共同プロジェクトを紹介

コロナウイルスの感染が広がる中、マスクや人工呼吸器などの医療器具が不足しています。そのニュースは世界中のクリエーターの耳に届き、各地でDIYムーブメントが始まっています。人工呼吸器をシュノーケリングマスクから作ったり、手をつかわずにドアを開けられる3Dプリント部品を作ったりと、コロナウイルスの蔓延を防ぐためのオープンソースデータは物凄いスピードで増え、又アップデートされています。こうして世界中のクリエーターが3Dプリンターとファブリケーション技術を駆使し、一般の人々や医療従事者のためのものづくりに携わっています。

FabCafe Bangkokはその一翼を担っており、医師だけでなく、エンジニア、デザイナー、製造会社と協力して、タイでの防護具・医療器具の設計を行っています。設計段階で、必ずユーザーである医師をチームの一員にむかえ、実際の医療現場に活かせるようにしてます。スピード感を持って動いているFabCafe Bangkokのプロジェクトを5つ紹介します。

#1: オープンソースフェイスシールドと100メッセージプロジェクト

 

FabCafe Bangkokは、さまざまなオープンソースのウェブサイトからのデータを用い、5つのフェイスシールドのデザインを出力しました。

[1] PRUSA PROTECTIVE FACE SHIELD RC 2
3D PRINT PRUSAというメーカーから公開されている3Dプリントのフェイスシールドは、小型な上強度があります。印刷には約3時間かかるものの、現在は新しいR3バージョンがアップロードされていて、印刷時間も随時短くなっています。ダウンロードはこちら

[2] FACE SHIELD WIREFRAME
TTGEEKにより設計されたこのフェイスシールドはほとんどフィラメント素材を使用していません。重さは約7.65g、印刷にかかる時間は約50分と、比較的短時間で早いです。ダウンロードはこちら

[3] PROTECTIVE VISOR
シンプルなデザインが特徴のフェイスシールドです。上記のフェイスシールドの前に早くも公開され、今回試した中では最も短い印刷時間です。ダウンロードはこちら

[4]オープンソースのフェイスシールドを最前線で働く医療関係者のために開発
制作にかかる時間が短く、持ち運びも簡単。制作コストが最も低いフェイスシールドです。早く作れる一方で、快適性が低いと医療従事者は報告しています。

[5] COVID-19 WIRE FRAME FACE SHIELD
このモデルは最も実用性があるとされています。PET(ポリエチレンテレフタラート)シート、PU(ポリウレタン)フォーム、輪ゴム等を使用して手作りすることができるので、特殊な加工機が不要です。低コストで非常に実用的なため、医療従事者に好まれるモデルとなっています。ダウンロードはこちら

100メッセージプロジェクト

FabCafe Bangkokの100 Message Projectは、Waen Chartvutkorbkulがデザインし、デザイナーのKanit-tha NualAnek Jeabがキュレーションを担当したもので、フェイスシールドを印刷して組み立てるだけでなく、想いが込められたプロジェクトです。

100 Message Projectでは、100人以上のデザイナーが、第一線で活躍するヒーローたちへの感謝と賞賛の気持ちを伝えるために、手書きのメッセージやカスタムデザインの励ましのメッセージを提出しました。

「あなたは私のヒーローです!」「諦めないでくれてありがとう!」「君たちは最高の活躍をしている!」などのメッセージが寄せられています。それらのメッセージはレーザーカッターによって、アクリルシールドに彫刻されています。

これらの想いがこもったフェイスシールドは、バンコクだけでなく、医療機器へのアクセスが制限されている人口の少ない地域にも送られています。タイのヤラもその一例です。バンコクから電車で15時間の距離にあるヤラの病院は、限られた資源の中で厳しい状況に直面しています。

ヤラに加え、100メッセージプロジェクトではラチャブリに50枚のフェイスシールドを送りました。また、スタッフ数が50人以下の病院15箇所にはそれぞれ20-50枚の3Dプリントされた部品を送りました。合計で1000枚以上のフェイスシールドがFabCafe Bangkokでつくられ、タイ全土に届けられています。

#2: スワブシールド


 

医療の現場ではフェイスシールドだけでは感染対策が十分ではないこともあり、医療従事者はさらに優れた防護具を必要とすることも多々あります。このプロジェクトでは、タイ赤十字が運営するChulalongkorn Memorial Hospitalの外科医のRattaplee Pak-Art准教授(医学博士)がFabCafeに連絡を取り、医療従事者を保護するためのスワブ(綿棒)シールドを共同で制作しました。

感染確認の綿棒検査を行う際、喉や鼻に綿棒を入れるため、患者が医療従事者の顔のすぐ近くでくしゃみや咳をしてしまうことがあります。このシールドは、診療中の感染やその他の潜在的な交差感染から医療従事者を保護します。

スワブシールドの生産規模を拡大するために、協賛が必要になったデザインチームはこのプロジェクトに必要な資金を調達するため、Taejai Crowdfundingを利用しました。FabCafe Bangkokは現在、100個以上のスワブシールドを共同制作し、医療現場に届けています。

#3: コロナウイルス検査ブース

病院は治療を行う場としての役割を担う一方、患者と医療スタッフの両方に感染拡大するリスクを背負っています。患者がくしゃみをしたり、その後医師が何かに触れたりすると、ウイルスは簡単に拡散してしまいます。こういった事態を防ぐため現在、バンコクで課題とされているのは、すべての病院にウイルスからスタッフを守るための陰圧室を設置することです。

この検査ブースは、医師のPasutachate Samorn, MD, Dr. Supakj Khomvilai, MD, Assoc.とProf Rataplee Pak-Art, MD.からFabCafe Bangkokが依頼を受け、設計されました。 プロトタイプの開発には、さらにNummom RarenessSmile O2のエンジニアやデザイナーらが関わっています。5つ以上のプロトタイプを経て、最終的なデザインはNummom Rarenessに送られ、生産が開始されました。

本プロダクトは感染の可能性を防ぐだけでなく、時間の節約にもなります。通常、ウイルスに感染した患者を治療する際は、医療従事者は保護具を着用しなければなりません。診療後も着替えなくてはいけない上、触れた可能性のある家具をはじめ、部屋全体を消毒する必要があります。しかし、この検査ブースでは、直接患者さんに触れることがないので、毎回の除染が不要になります。こうして医師と患者を守ることができるのです。

FabCafe BangkokとTaejai Crowdfundingは現在、ドイツのLuftfilterbau GMBH社と協力して、このプロジェクトのためのHEPA H14(高効率粒子状空気)フィルターをさらに製造し、依頼を受けた病院に納品しています。

 

#5: PAPR(呼吸用保護具)システム

現在、チュラロンコーン大学医学部兼看護学部のBoonrat Lohwongwatana助教授の指導のもと、デザインディレクターのJeep.P. Narongthanarath氏(Design In Vitro)が、PAPR(呼吸用保護具)システムを開発しています。P. Narongthanarath(Design In Vitro)とFabCafe Bangkokが共同で進めているこのプロジェクトは、医療器具としてもFabプロジェクトとしても注目されています。

PAPRシステムは、高性能フィルターを通して、肺の力の代わりに送風機を使用しています。そのため、安定した呼吸を可能にし、統合的に呼吸器、頭部、顔、目、聴覚を保護することにより、長期間に渡って使用することができます。PAPRシステムは、コロナウイルスのための有力な医療保護装置のように聞こえますが、現在ではタイ全土には限られた数しかありません。

設計チームは医師、看護師、エンジニアからのフィードバックを元に、FabCafe内で最初から最後まで制作することを目指して、いくつかのプロトタイプを準備しています。このプロジェクトを実現するためにデルタ電子株式会社が送風機用の高品質モーターを提供し、電機メーカーのシャープは空気中の不純物を除去するために必要なHEPA(高効率粒子状空気)フィルターを提供しています。PAPRシステムは高度な設計が求められるため、実際の医療現場で使われるには厳しい審査が必要です。そのため、設計チームは現在、食品医薬品局の緊急承認を申請しているところです。

 

Do what you can, with what you have, where you are.
今いる場所で、持っているもので、できることをしましょう。

-Theodore Roosevelt
セアドア・ルーズベルト

 

現在コロナウイルス対策として作られている3Dプリント部品の批判の多くを占めているのは、医療関係者に相談することなく、オンラインのファイルをダウンロードして大量にプリントしているところです。

しかし、本記事で紹介した各プロジェクトに共通しているのは、医療従事者も設計段階からクリエーターと一緒に動いている点です。最終的にすぐに使えるものを作るために、FabCafeのサポートを受けながら、主要なユーザーにプロジェクトをリードしてもらうことを意図的に設計しています。FabCafe Bangkokでは、各分野の専門家が密に連携し、医療関係者がリードしています。このようにプロジェクトをサポートする役にFabCafeが回ることで、効果的に現場に貢献することができ、より質の高い製品を迅速に展開することができます。

今後もFabCafe Bangkokとその共同制作チームからどんなアイデアが出てくるのか楽しみです!

FabCafe Tokyoも現在、医療現場へフェイスシールドを提供するなどの取り組みを行っています。また、医療とFabの間をつなぐための情報の共有やディスカッションを行うオンラインイベント「How to Make it Safe -誰かのためのものづくり」を開催します。
FabCafeとして今出来ることを今後も発信していきたいと思います。

 

この記事はFabCafe Globalにより書かれたものを参考にしております。


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MITのNeil Gershenfeld教授が提唱した「Fab」革命に可能性を感じたFabCafeは、未来の製品、サービス、体験を創造することに特化した「Fab」イノベーションラボです。ここでは、メーカー、企業、そして一般の人々が、ファッションからバイオまで幅広い分野のデジタルファブリケーションツールや体験にアクセスすることができます。2012年に東京で設立されたFabCafeのグローバルネットワークは、現在、バンコク、バルセロナ、香港など世界11か所でクリエイティブなコミュニティにサービスを提供し、育成しています。

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  • FabCafe編集部

    FabCafe PRチームを中心に作成した記事です。

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