Column
2022.1.31
浦野 奈美
SPCS / FabCafe Kyoto
こんにちは、FabCafe Kyotoの浦野です。FabCafe Kyotoで2020年にスタートしたプロジェクトインレジデンス、COUNTER POINT(以下、CP)。参加するメンバーも、普段京都在住じゃないメンバーも毎回いて、さまざまな活動が続いています。この記事では第6期のメンバーの3ヶ月の振り返りと活動をまとめます。
東京有明にあるパナソニック株式会社のグローバルな総合情報受発信拠点「パナソニックセンター東京」2・3階に、2021年にオープンした「クリエイティブミュージアム」、「AkeruE(アケルエ)」。FabCafe Kyotoを運営するロフトワークが同施設の総合プロデュースを支援した施設でもあります。ここは、大人も子供も科学を学び、遊び、実践できる施設。COUNTER POINTで活動したメンバーの次のチャレンジを目指すフィールドとしても可能性を広げられる場所です。そこで、今回、このAkeruEの立ち上げディレクターの越本がCOUNTER POINTのメンバーにメッセージを送りました。以下の動画をご覧ください。
大学院で「歯磨き」の重要性を改めて知り、歯について考えるようになったという仲野 由貴子さん。心や身体の健康に大きく関わる歯の大切さを伝えるべく活動をしています。ある時、「日本では猫派と犬派が半々らしい。猫好きが歯磨きしたら良いんですけどね。」という、友人の何気ない一言をきっかけに、「自分も猫が好きだし、猫を入り口に歯磨きの大切さを伝えることができたら、日本の半分の人が歯磨き好きになる!」とひらめいたという仲野さん。歯磨きから自分を大切にする、というテーマでカードゲームを開発しました。
猫派の方々向けに歯に興味をもってもらうためのカードゲームを3パターン製作中だった彼女。CPメンバーやゲームクリエイターの方を招いてゲーム検証会をしたり、FabCafeで出会ったクリエイターのヘルプの下トランプケースを作ったり、予防歯科の開業医の方と出会ったことで、さらにゲームの内容をアップデートしたそうです。
さらに、このゲームを海外展開しないかというお誘いがきたり、チョコのフィラメントを3Dプリンターで出力して、オリジナルのチョコレートを作ったりもしたそうです。
活動を彼女自身が振り返ったプレゼンの様子はこちらからご覧いただけます。
「毛殻やぶり」というプロジェクトでCP第4期に参加した、カラーモールアーティストのまきのみつるさん。その時の活動を期に、FabCafe Kyotoに来るたびにカフェのいたるところに作品を忍ばせてきたみつるさん。このモールたちが動いたら面白いなと思い、こまどりアニメを作ることを思いついたそうです。
みつるさん、今回はコマドリアニメだけではなく、比較的簡単にできるカラーモールのレシピを作ってキットを売るというクリスマスモールアートウィークというイベントも実施。折り紙における山折/谷折などの共通言語がない中、写真と言葉で作り方を伝えるという、かなり大きなチャレンジだったと思いますが、どう発展していくのか楽しみです!
動画作品は最終的に3本作られ、NHK京都のニュース番組内で特集されるなど、今回も新たなチャレンジにたくさん取り組んだみつるさんでした。
本人の振り返りプレゼンの様子
みつるさんが作った動画
みつるさんによるFabCafe CM その2
みつるさんによるFabCafe CM その3
Chain&co.というクリエイターユニットで活動する牛嶋亮さんと佐藤彩子さん。普段は、レーザーカッターやシルクスクリーン、刺繍などで、大好きな銭湯などモチーフに、さまざまなオリジナルの作品を制作・販売しているおふたり。今回は、「ジェスモナイト」という素材に出会い、銭湯の修繕で出た廃材(タイルなど)を活用した商品開発ができないかという思いに至ったのだそうです。
さすがプロダクトデザイナー、3カ月の間に3つの製品を制作。
ひとつはヴィヒタというサウナで使う植物を練り込んだコースター。ヴィヒタジャパの公式グッズとして納品・販売されました。その後、ヴィヒタコースターの経験を生かし、改装されることになった「船戸湯」という銭湯の檜を使ってコースターを制作。まだプロトタイプの段階とのことで、早く製品化して船戸湯で販売できるようにしたいとのこと。
3つ目は、YAK Kyotoという美容室のカラー剤のキャップを再利用し、かつジェスモナイトを活用して、キャップで閉められるお香立てを開発。こちらもすでにYAK Kyotoで販売されているとのことです。さらに、その流れでFabCafe Kyotoのコーヒーカスを使ったコースターも制作。プロトタイプはカフェでドリンクを提供する際にテスト使用されました。
行動力もあり、実現力もある彼ら、CPの事務局メンバーが介入しなくとも、目標どおり淡々と作業を勧められてたこそ、実は事務局としてはあまり力になれなかったと気にしていましたが、新プロダクトを3つも開発していてさすがです。次はもっとチャレンジングなテーマでもう1回戻ってくるぞ!とのこと。楽しみです!
本人の振り返りプレゼンの様子
京都産業大学で、ゲーム開発やインタラクション、デジタルファブリケーションを学んでいる小山さん。これまでもインタラクティブなプロトタイプや作品を作ってきた小山修平さん。中学生の頃からゲームを作りたいと思っていたそうで、世界中を笑顔にしたい!ということで、「asobi -> smile」というプロジェクト名で参加しました。
小山さんがCPに入ったきっかけとなった、世界同時開催のワークショップGlobal Goals Jamというイベントで、参加していた第5期メンバーの「インクルーシブなアソビ」チームと出会い、さまざまな障害・性別・年齢に関わらず、みんなが集えるインクルーシブな遊びを作りたいと思い、参加することに。
期間中、「インクルーシブなアソビ」チームやその繋がりで知り合った方々と、音楽を楽しむためのプロトタイプを作りながら、参加当初の自分を振り返って「実は好きが見つかってなかったと気づいた」という修平さん。当初は「これが好きなんだ!」と思っていたことが、活動をする中で「ざっくりしていた」ということに気づいたそうです。
「やりたいこと」をいきなり問われると困ってしまうこともあるかもしれませんが、「好き」なら見つけられるかもしれませんし、さらに、修平さんの素敵なところは、他のチームの活動に興味を持ってどんどん入っていくところ。今後もタームに関係なく関わり続けてくれたら嬉しいです。
京都大学農学部1年生の鈴木彩太さん。高校時代は物理部でロジック回路を使ってゲームを作ったり、二足歩行ロボットを開発していたとのこと(ロボコンにも出場したらしい)。3Dプリンタも個人所有して昼夜を問わず稼働させ続けているというFab男子。
そんな彼が今回なぜ火と水をテーマにしたのかというと、物理部の合宿がきっかけなのだそう。それが、便利なキャンプ用品一切禁止の山奥でのキャンプだったそうで、薪を割って火をおこすところから手作業で焚き火を作ったことで、焚き火にハマったのだそうです。他方、都心にもかかわらず渓流が近くにあったりお台場に近い環境だったのもあり、水辺によく学校をサボって行ったりしていたそう。火も水も常に表情を変えていくところが面白く、飽きない面白さがある一方で、まだどうしてこんなに火や水に惹かれているのか分析しきれていないところがあるとのこと。CPのこれまでのメンバーたちが、感性に焦点を当てたものづくりに取り組んでいる様子を見て、自分も火や水に惹かれている理由を分析しながら、感性に寄り添ったものづくりに取り組んでみたいと思い、参加を決めたとのことでした。
まず、FabCafe Kyotoの主催企画「Make the Phenomenon」というワークショップシリーズに参加したことがかなり刺激になったとのこと。これは、自然現象をテーマに作品を作るシリーズということで、まさに鈴木さんにぴったりの企画でした。実際、このワークで、音に色を感じるような、ひとつの現象に複数の感覚を感じる「共感覚」ということと、川のせせらぎや炎のゆらぎのような変化という「1/fゆらぎ」の2つの存在の気づきがあったということで、それをベースに作品を作ったとのことです。
最終的に、彼が本質的な魅力だと感じる「火や水のゆらぎ」をセンサーで認識して別の表現に変換して見せる作品を制作しました。ただ、炎を用いるということで、築120年のFabCafe Kyotoでは着火した状態では展示できず、若干残念な部分もありましたが、鈴木さんとしても、引き続き改善していきたいとのこと。またどこかで作品が見れる日がきますように!
以上、第6期メンバーの様子でした。彼らの活動に巻き込まれたい方も巻き込みたい方も、是非FabCafe Kyotoにお越しください。同時に、COUNTER POINTはこれからも継続してメンバーを募集します。社会と接続させたい偏愛や衝動をお持ちの方は、ぜひ次回以降の応募をお待ちしています。
関連リンク:
COUNTER POINT by FabCafe Kyoto について
-
浦野 奈美
SPCS / FabCafe Kyoto
大学卒業後ロフトワークに入社。渋谷オフィスにてビジネスイベントの企画運営や日本企業と海外大学の産学連携のコミュニティ運営を担当。2020年にはFabCafe Kyotoのレジデンスプログラム「COUNTERPOINT」の立ち上げと運営に従事。また、FabCafeのグローバルネットワークの活動の言語化や他拠点連携の土壌醸成にも奔走中。2022年からは、自然のアンコントローラビリティを探究するコミュニティ「SPCS」の立ち上げと企画運営を担当。大学で学んだ社会保障やデンマークのフォルケホイスコーレ、イスラエルのキブツでの生活、そして、かつて料理家の森本桃世さんと共催していた発酵部活などが原体験となって、場の中にカオスをつくることに興味がある。
大学卒業後ロフトワークに入社。渋谷オフィスにてビジネスイベントの企画運営や日本企業と海外大学の産学連携のコミュニティ運営を担当。2020年にはFabCafe Kyotoのレジデンスプログラム「COUNTERPOINT」の立ち上げと運営に従事。また、FabCafeのグローバルネットワークの活動の言語化や他拠点連携の土壌醸成にも奔走中。2022年からは、自然のアンコントローラビリティを探究するコミュニティ「SPCS」の立ち上げと企画運営を担当。大学で学んだ社会保障やデンマークのフォルケホイスコーレ、イスラエルのキブツでの生活、そして、かつて料理家の森本桃世さんと共催していた発酵部活などが原体験となって、場の中にカオスをつくることに興味がある。