Event report

2024.6.28

どんな未来を創る? “次世代の担い手”と考える、未来の輪郭

前編:『あいちフューチャーフェス 2024』@FabCafe Nagoya 開催リポート

東 芽以子 / Meiko Higashi

FabCafe Nagoya PR

Nagoya

トランスフォーメーション

この言葉を聞かない日はないくらい

日々、イノベーティブな“変革”が求められる過渡期の今日

ですが、未来が突然現れるものではないのと同様に

変革は、待っているだけでは決して成し得ないもの

誰が、どうやって、より良い未来を創るのか

誰が、どのような、変革を仕掛けるのか…

歴史や文化、産業があり、人も多く集まる、豊かな愛知

それ故に、保守的とも揶揄されがちなこの地を

もっと自由に、もっとプロアクティブに

未来や変革を担うことのできる“主人公”が育つ地に!

今、未来を創るため挑戦する者たちの、こうした想いから

FabCafe Nagoyaをメイン会場に開催された『あいちフューチャーフェス 2024』

県内外の企業や、行政、教育機関など様々なフィールドから賛同者が集まり

未就学児から大学生までの“次世代の担い手”と、対話を通して真剣に向き合いました

「こんな未来だったらいいな」

おぼろげな想いがぶつかり合い

「こんな未来を創る!」

明確な志に“変革”していったフェスの様子を前・後編に分けてリポートします!

左から、辻 悠佑さん、松田 千恵子さん、矢橋 友宏、苔縄 義宗さん、小田 健博さん。事務局メンバーは有志で構成され、そのバックグラウンドも様々。

地元小学生(写真/左)や大学留学生(写真/中央)のほか、名古屋国際中学校からは、SDGs未来倶楽部のメンバー(写真/右)が参加してくれました。

2024年梅雨入り直前の名古屋・久屋大通公園。『あいちフューチャーフェス 2024』のメイン会場となったFabCafe Nagoyaには、ものづくりやコンサルティング、投融資、そして、行政・教育・医療機関に法曹界etc…実に多様なフィールドの第一線で今世紀の課題に向き合う“挑戦者”=大人と、愛知県内の幼稚園児から大学生までの子どもたちが、世代だけでなく、国籍、ジェンダーをも超えて、続々と集まりました。実は、昨年まで“スタートアップ”にフォーカスしていたこのイベント。開催4年目の2024年からは、“スタートアップ”を”フューチャー”の名に置き換え、未就学児から大学生までの“次世代の担い手”に幅広く参加してもらえるようアップデートされました。その背景について、実行委員の1人、辻 悠佑さんは、オープニングでこう話しました。

目指しているのは、無限の未来に出会える新しいフェスです。未来のあり方について再考するために、参加者は、立場に関係なく同じ目線で対話をしてほしい。フェアで本質的な対話が生まれたら、今度は、そこからどんなことに挑戦したいのかを、それぞれが具体的に発見できるような機会にしたいんです。未来を創るのはスタートアップだけじゃない。事務局のメンバーと話し合い、世代を超えて、多くの人が未来を学べる場を設けることにしました。すでに持っている思考の枠組みを一度解き放って、まっさらな状態で未来に徹底的に向き合っていきましょう(株式会社ICMG 辻 悠佑さん)

2日間にわたって開催されたフェスの初日には、「宇宙」「(防災における)レジリエンス」「サーキュラーエコノミー」という、近未来のあり方に欠かすことのできない重要なテーマがピックアップされ、トークセッションが行われました。一見、日常の生活からは遠く離れた“特殊な誰か”しか関わることのできないようなテーマですが…実は、少しアンテナを伸ばせば、誰にでも関わることができるきっかけがあるということを、知見のある登壇者が説明。参加者と共に課題を言語化し、“関わりしろ”を手繰り寄せ、ひいては、アクションに結びつけようというものです。

「宇宙」のトークセッションには、ステージ左から、田中 大裕さん、三宅 創太さん、小田 健博さんが登壇。ディスカッションを重ねた結果、最終的に“あるコミットメント”が生まれることに。

登壇者

株式会社ダイモン 三宅 創太さん / フォースタートアップス株式会社 小田 健博さん / ウーブン・バイ・トヨタ株式会社 田中 大裕さん

民間人の宇宙旅行が実現し、火星では生命体が生存した痕跡について探査が進められるなど、日々、エキサイティングなニュースが舞い込み、宇宙がますます身近に感じられる昨今。今や、宇宙ビジネスは、ロケットや衛星といったインフラの開発ばかりでなく、宇宙ゴミの収集や宇宙保険、月での自給自足を可能にする資材開発といった、プロジェクト環境のサポートを目的とするものなど実に多様です。世界におけるその市場は拡大の一途で、2040年代には1兆ドルを超え、2020年代の約3倍に拡大すると予測されています(出所:Morgan Stanley)。

このトークセッションには、2024年度内に月への打ち上げが予定されている月面探査者「YAOKI」の開発に関わる三宅さん、宇宙スタートアップをはじめ、様々なスタートアップを支援する小田さん、そして、事業開発や産業創造が専門の田中さんが登壇。「宇宙の仕事って…?」という漠然とした疑問からスタートすると、突如、「無人島を自由にしていいとしたら何をする?」と、三宅さんが質問で返答。「食料を調達・調理・冷蔵したり、通信や移動の必要もあるし、整地して建築物も必要になる。宇宙にはそうしたニーズの全てがある。無人島のように未開の状態なんです。」と、宇宙には無限のニーズや開発の余地があり、今後、誰もが宇宙に関わることのできる可能性を示しました。

しかし、多くの人にとって、宇宙とは、まだまだ遠い存在…。トークセッションでは、宇宙環境にも技術の応用が期待されるアグリテック・スタートアップが愛知や三重という“地元”から誕生していることも紹介されましたが、参加者の多くは「宇宙=特殊」の固定観念を抱いていることが明らかに。ですが、対話を続けると…「宇宙に関わる大人が“キャッキャ”すると、楽しさが伝播して、周りも“キャッキャ”していくかも!(ラジオパーソナリティ)」「ほとんどの人が宇宙と接点がないから普段話題にならないだけなのかも。私は宇宙の景色を見てみたいし、無限の広さを感じてみたい。五感で味わえる機会があれば…。(中学生)」と、それぞれの視点から課題へアプローチするアイディアが生まれます。これらをヒントに、最終的は、「誰もが楽しめ、関わることのできる“テーマパーク”をつくれば、宇宙がより身近になるのでは?」という仮説が生まれ、2025年のフェスでは、久屋大通公園で宇宙体験ができる仕掛けをつくろう!というコミットメントに発展しました。

左から、江口 清貴さん、伊勢 正さん、小山 真紀さん、境田 正樹さん、辻 悠佑さん。スノーピーク久屋大通公園店が会場となり、テント設営やキャンプ料理のスキルは、有事の際の対応力となるという余談も…!

(写真/左)今でも東日本大震災の被災者から窮状について法律相談を受けると話す、福島出身の弁護士、尾形 和哉さん。

登壇者(第1部)

神奈川県 CIO・CDO 江口 清貴さん / 防災科学技術研究所 伊勢 正さん / 岐阜大学 高等研究院地域減災研究センター 准教授 小山 真紀さん  / TMI 総合法律事務所 パートナー 境田 正樹さん / TMI 総合法律事務所 パートナー 尾形 和哉さん / 株式会社ICMG 辻 悠佑さん

2024年元日に起きた能登半島地震の被災地では、発生から半年近く経過した今もなお、仮設住宅の不足や災害関連死の増加といった様々な困難が山積しています。こうしたニュースは、南海トラフ巨大地震への危機感が募る東海エリアにとっても切実と言えます。2つ目のトークセッションでは、防災における「レジリエンス(回復力・対応力)」をトピックに、有識者が、第1部、第2部にわかれ、“変革”すべきことについてディスカッションしました。

第1部で、まず、口火を切ったのは、神奈川県で行政サービスのDX戦略を担う江口さん。能登半島地震発生7日後に現地入りしたものの、現地の対策本部では情報がデジタル化されておらず、各所から「“紙”に書かれた情報が伝聞で上がってくるような混乱状態だった」と惨状を報告しました。そこで、衛星インターネットアクセスサービスの「スターリンク」を手配。被災地入りする消防などの協力を得て情報のデジタル一元化に努めた経験から、災害時のDXを進めるには、まず“エクスペリエンス(経験・体験)”が必要だと訴えました。「なぜ、いまだに、災害現場にテクノロジーが適用されていないのか。それは、現場の“成功体験”が少ないから。テクノロジーを活用することのメリットを自治体幹部が体験し、見識を積み上げることが、DXの前進に繋がるのではないかと思います。(江口さん)」

また、江口さんは、個人情報の取り扱いなどの運用ルールが自治体ごとに異なるため、今回得た経験が次なる災害時に活かせないという問題点も指摘。すると…「民間のスペシャルチームをつくってビジネス化し、行政との持続的な関係性をつくれば良いのでは?(辻)」という意見から、今後、フェス賛同者などがマルチステークホルダーとして共同運営するデジタル自治体を立ち上げよう!というアイディアにまで発展しました。

続くセッション第2部には、愛知県、名古屋市、トヨタ自動車、東京海上の担当者が登壇。名古屋市は防災アプリで情報発信の改善に取り組んでいることや、災害支援協定を運送業者などと結び、ロジスティクスなど民間のノウハウを活用できるよう努めていると説明しました。「災害対応=行政の責務」という認識について再考する機会ともなったこのセッション。避難にかかる費用を保険で負担し、加入者の逃げ遅れゼロを目指す東京海上の取り組みや、電気自動車の給電機能を災害時に活用するためのトヨタ自動車の啓発活動が話題に。企業、個人に関わらず、自主的なアクションが行政の負担を減らすことにも繋がることから、日常からどんなアクションが必要かつ可能かを熟知し、訓練を通して有事に活きる“エクスペリエンス”としていくべき、という結論に至りました。

いざという時に困らないために、積むべき経験を積んで、オーナーシップを持つ人を育てることが必要。毎年のフェスでそれぞれのアクションを定点観測して、本格的な変革につなげていくことができればいい。(尾形さん)

(写真/右)右から、黒崎 友仁さん、矢橋 友宏、星野 一馬さんが登壇。(写真/上、左、中央)会場では、UACJが手がけるアルミカップが参加者に配られ、手触りや軽さなどを感じながら活用案を考えました。

登壇者

株式会社UACJ 黒崎 友仁さん / 株式会社UACJ 星野 一馬さん / 株式会社 FabCafe Nagoya 矢橋 友宏

SDGsやカーボンニュートラルについては理解できても、“サーキュラーエコノミー”という言葉は初めて聞く…。そんなリアクションが子どもたちから多くみられたこのトークセッションには、アルミ圧延メーカー国内シェアトップの株式会社UACJで、アルミニウムの資源循環に取り組む黒崎さんと星野さんが、そして、循環型のオープンイノベーションを目指す東海サーキュラー・ラボを主催するFabCafe Nagoyaから矢橋が登壇。廃棄物をできるだけ出さず半永久的に資源が循環するサーキュラーエコノミーを実現させるために、CO2の排出量を抑え、何度でもリサイクルが可能なアルミカップをどう活用できるかについて、ディスカッションを行いました。

すると、会場からは…糸電話、楽器、苗木ポット、砂遊びの道具、テイクアウトカップ etc…なんともカラフルなアイディアが!学生や幼い子供を育てる親、様々な趣味を持つ人などなど、多様な視点で循環を描く参加者が、リサイクルしても劣化の少ないアルミカップの有用性に気づく機会となりました。

また、地球上だけでなく、宇宙での循環にもアルミを利用すべく「ロケットのエンジンでアルミニウムを溶かしてリサイクルできれば、必要に応じた様々な材料として転用できるのでは?」という意見も。さらに、サーキュラーシティーを謳う愛知・蒲郡市の担当者からは「蒲郡のテーマパークやフェスに導入していただきたい!」というコラボレーションの可能性も生まれました。実は、こうしたシミュレーションは、“ものを捨てること”について改めて自問することに繋がると話すUACJ・黒崎さん。多くの人の環境意識を醸成していくため、UACJでは、今後、今回生まれたアイディアの実装を検討するということです。

未来を、どのように創っていくのか。世代や立場を超えて考える『あいちフューチャーフェス 2024』の初日は、まだまだ語り足りない参加者が、ディスカッションの続きをカフェのそこここで繰り広げるという熱気溢れる中、クロージングを迎えました。それぞれがこの日の成果を発表する中、フェス実行委員の1人で起業家の鈴木 世津さんが、女性起業家を支援するシステム構築に奮闘した結果、米大手企業からの出資を得た自身の経験談を例に、「夢を語ることから始まり、世界を変えたいと言い続けてアクションしたら、大企業も支持してくれる。既存の企業を追い越すような“勢い”のある未来へのアクションが、ここから生まれてくるのを楽しみにしています。」と、未来を創る志を持った参加者を激励しました。参加者の中学生たちは、「大人に囲まれて緊張したけれど、カフェの雰囲気にリラックスできた。」「いろんな仕事の人がいて、みんなが繋がる感じが素敵でした。」「大人は、実社会でいろんなことにチャレンジしていて、可能性に溢れたポジティブな言葉で未来を語ってくれたのが嬉しかった。明るい未来が待っていると思えたことが収穫です。」と、緊張が解けた笑顔で感想をシェアしてくれました。

未来は全ての人に平等だからこそ、誰もが主人公。未来を本気で考えるための『あいちフューチャーフェス 2024』は、初日から既にオープンイノベーションを予感させるような“勢い”に乗り、そのままDay 2へと向かいました!

 

後編へ続く

開催概要

『あいちフューチャーフェス 2024』

愛知県でのアントレプレナーシップ育成を目的に、2021年より毎年『あいちスタートアップフェス』を開催。FabCafe Nagoyaはこのミッションに共感し、初回からヴェニューパートナーとしての役割を担っています。より良い未来創造への志を同じくするメンバーが、業種や立場を超えて集まり、2024年からは、世代や立場を超えて未来を考えるための『あいちフューチャーフェス』をプロデュースしています。


  • 一般社団法人あいちフューチャーフェス

    あいちフューチャーフェスは、「あいちに世界とつながる未来体験&未来想像の場を創り出す挑戦 -無限の未来に出会える、新しいお祭り-」をコンセプトとして2020年にスタートしました。現実世界の忙しさの中で失いつつある「未来への大切な問いに向き合う場」を目指す、誰もが楽しく参加できるお祭りです。毎年毎年、世界中・日本中の未来への挑戦者が愛知県に集結します。国境・地域・業界・会社の垣根を超えた社会的イニシアチブとして運営しており、誰もが運営にも参加でき、みんなで共に創っていく、未来型のお祭りです。

    https://future-fes.com/

    あいちフューチャーフェスは、「あいちに世界とつながる未来体験&未来想像の場を創り出す挑戦 -無限の未来に出会える、新しいお祭り-」をコンセプトとして2020年にスタートしました。現実世界の忙しさの中で失いつつある「未来への大切な問いに向き合う場」を目指す、誰もが楽しく参加できるお祭りです。毎年毎年、世界中・日本中の未来への挑戦者が愛知県に集結します。国境・地域・業界・会社の垣根を超えた社会的イニシアチブとして運営しており、誰もが運営にも参加でき、みんなで共に創っていく、未来型のお祭りです。

    https://future-fes.com/

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Author

  • 東 芽以子 / Meiko Higashi

    FabCafe Nagoya PR

    新潟県出身、北海道育ち。仙台と名古屋のテレビ局でニュース番組の報道記者として働く。司法、行政、経済など幅広い分野で、取材、撮影、編集、リポートを担い、情報を「正しく」「迅速に」伝える技術を磨く。

    「美しい宇宙」という言葉から名付けた愛娘を教育する中で、環境問題に自ら一歩踏み出す必要性を感じ、FabCafeNagoyaにジョイン。「本質的×クリエイティブ」をテーマに、情報をローカライズして正しく言語化することの付加価値を追求していく。

    趣味はキャンプ、メディテーション、ボーダーコリーとの戯れ。



    新潟県出身、北海道育ち。仙台と名古屋のテレビ局でニュース番組の報道記者として働く。司法、行政、経済など幅広い分野で、取材、撮影、編集、リポートを担い、情報を「正しく」「迅速に」伝える技術を磨く。

    「美しい宇宙」という言葉から名付けた愛娘を教育する中で、環境問題に自ら一歩踏み出す必要性を感じ、FabCafeNagoyaにジョイン。「本質的×クリエイティブ」をテーマに、情報をローカライズして正しく言語化することの付加価値を追求していく。

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