Event report

2019.6.26

AIはデザイナーの役割をどう変えるのか:A.D.A.M 第六回レポート 〜ジェネラティブデザインの実践とプロトタイピング〜

FabCafe編集部

こんにちはFabCafeの金岡です。FabCafeではEverblue Technology社との協業プロジェクトとして、「A.D.A.M」というプロジェクトをスタートしました。

「A.D.A.M」は、オートデスク社による3D CAD/CAM ソフトウェア 「Fusion 360」のジェネラティブデザインを使って、自動操船ヨットのデザインをしようというプロジェクトです。近年、AIを使って解析、環境や目的に最適化した形状を生成する流れは、様々な産業で進んでいますが、このプロジェクトでは解析による最適化だけでなく、AIを使って「誰も見たことのない形をデザインする」ことにチャレンジします。

プロジェクト詳細→https://fabcafe.com/tokyo/blog/a-d-a-m-ai

第6回では、スケッチを重ねてきたデザインに、AIを使ったデザインのエッセンスを加えます。人間ではデザインできないかたちとデザイナーはどう向き合うのでしょうか。

第1回レポート→https://fabcafe.com/tokyo/blog/design-with-ai-adam-report-1/
第2回レポート→https://fabcafe.com/tokyo/blog/design-with-ai-adam-report-2/
第3回レポート→https://fabcafe.com/tokyo/blog/design-with-ai-adam-report-3/
第4回レポート→https://fabcafe.com/tokyo/blog/design-with-ai-adam-report-4/
第5回レポート→https://fabcafe.com/tokyo/blog/design-with-ai-adam-report-5/

ジェネラティブデザインの実践


Autodesk, Fusion 360のエヴァンジェリスト、藤村祐爾さんにお越しいただきデザイナーの思い描いたデザイン、ジェネラティブデザインを適応させてゆきます。

△藤村祐爾 (Fusion 360 エヴァンジェリスト): 18 歳で渡米。工業デザインを学びニューヨークで 7 年ほど工業デザイナーとして活動したのち帰国。2013 年オートデスク株式会社に入社。テクニカルセールスのポジションを経て、現在はより多くの方に Fusion 360 を知っていただくための活動にエヴァンジェリスト (伝道師) として従事。

△航空機部品へのジェネラティブデザインの適用例。ボルト留めの位置や荷重の条件を設定し、コストと強度の要件を満たした形状を作り出す。

ジェネラティブデザインについて、詳しくは第一回のレポートを参照↓
https://fabcafe.com/tokyo/blog/design-with-ai-adam-report-1/

 

今回はチームAのジェネラティブデザインにチャレンジ。元となったスケッチはアメンボにヒントを得たデザインです。

ジェネラティブをかけるにあたり、まずはハル(船体)をあらかじめモデリングしインポートした上で、荷重条件を設定します。

ジェネラティブの計算中の初期のアウトプット。条件を変えてはスタディを繰り返し、アウトプットを吟味してゆきます。

計算を進めたバージョン。特に向かって左側のパーツが進化してきているのがわかります。

ジェネラティブデザインの難しいポイントは、思った通りの形がすぐに導き出せるわけではないというポイント。裏を返せば、与えられた条件下でのジェネラティブの結果、導かれた最適化された形は意外とシンプルな形であったということも多くあります。

“ジェネラティブ”っぽくてかっこいい形かつ、本当に条件に対して強度が最適化された形を作るには、接続点をわざと増やしたり、侵食して欲しくない領域を恣意的に設定したりとAIとの対話が必要になります。このスタディを繰り返すことで、初めてデザインのツールとしてジェネラティブを使用することができるようになります。

完成したジェネラティブがこちら!

スケッチデザインを踏襲しつつ、ジェネラティブデザインを取り入れることができました。ここからさらにデザイナーの呂さんがスタイリングを行い、思い描いたデザインに近づけます。

もちろんジェネラティブデザインに手を加えた時点で、与条件下で最適化された形の強度などの機能的な意味は無くなります。(上のデザインの場合、計算結果を左右に鏡像反転させ、かつ全体の形状を曲げてる。)

ただ、このように人間とAIがスタディを繰り返すことで、思い描く世界ににじり寄っていく。そういった使い方が、ジェネラティブデザインの実践の面白いところです。

 

プロトタイプベースで制作を進める変形ヨットチーム

ジェネラティブで進化する変形ヨット

チームAに続いて、チームCでもジェネラティブ導入の検討をはじめました。チームCでは変形の中心になる、リンク機構のアームにジェネラティブを適用してみることにしました。

AIによるデザインと言えども、そう簡単にうまくいくわけではありません。荷重条件や制約条件の設定の仕方次第ではうまく形が収束せずに、こちらの写真のように失敗してしまうことも。また同じ条件を設定しても、想定する素材によっては想定以上に太くなってしまったり、細くなってしまったりします。目的に応じてこういった条件をどのように設定するか、というのがAIと対話しながらデザインをするプロセスそのものになります。

最終的に採用することになった形状は以下の2つですが、2つめのアームについては、造形可能な3Dプリンターの関係で、沖縄でのイベントまでには見送ることになりました。ジェネラティブを使ったデザインは、条件設定の難しさもありますが、実際に採用したい形状ができあがったとしても、その造形が可能な工作機械や業者さんがあるとは限りません。つまりシミュレーション上は成立することがわかっても、それを現実の形に落とし込むことが可能かは別の課題なのです。

Living Anywhere @沖縄 に向けて

ここまで、ジェネラティブデザインの実践について紹介してきましたが、実装の難しさもありながらも各チーム課題をひとつひとつ潰しながら、6月末のLiving Anywhere @沖縄 でのデザイン紹介に向けて鋭意プロトタイプの製作中です。これまで6回のレポートを通して紹介してきた各チームあのヨットが、どのような形でアウトプットされるのか、ぜひ楽しみにしていてください!

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  • FabCafe編集部

    FabCafe PRチームを中心に作成した記事です。

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