Interview
2016.6.14
FabCafe編集部
機能的なデザインで、快適なライフスタイルを提案するアパレルブランド「abrAsus(アブラサス)」と、FabCafeのコラボレーションで生まれた「SKETCH NOTE by abrAsus×FabCafe」。
実はこのプロジェクト、2年越しで世に出すことができました。SKETCH NOTEのプロジェクトの始まりとこだわりなどについて、仕掛け人であるロフトワーク代表取締役社長の諏訪と、バリューイノベーション株式会社の南社長と吉野さんにインタビューを行いました。聞き手はPRの石川とFabディレクターの相樂です。
(上記写真は、左からロフトワーク石川、相樂、諏訪、バリューイノベーション南社長、吉野さん)
やろう!と決めてから2年をかけ、ついにプロダクトリリース
諏訪:いやあ、バリューイノベーションさん、2年も付き合って頂き本当にありがとうございます。
南:いやいや、こちらこそ。2年間いろいろありましたね。
吉野:これがこれまでのプロトタイプです。
石川:こんなにたくさん。吉野さん、本当にありがとうございます…。
当時はくるっと巻くタイプのノートを考えていたり、磁石を利用したらどうかとか、iPadと併用できるものとか、いろいろアイデアは出ました。「SKETCH NOTE = 革のシール」だった時代もありましたね。これ、小さい革を十字に縫い合わせて、裏はシールになっていて、4つのシールをパソコンなどに貼り付ければ、紙が挟める究極のジョッター(※)ノートになるというアイデアだったんですよね。でも…でも社内の理解が得られませんでしたね。
(※注:ジョッターとは、英語で「jot(メモする)」「jotter(メモする人/メモ帳)」に由来する、メモをとるために特化した文具で、メモを挟む溝と用紙を数枚ストック出来るポケットのみの構造)
相樂:この革のシールのプロトタイプを見せてもらった時、みんなポカーンとしていましたね(笑)
アイデアは、いつ・どこで考えますか?
南:ところで、アイデアってどんなところで考えますか?
諏訪:うーん、オフィスの中ではないですね。バスルームで頭を洗っている時とかかな。
南:出自はわからないんですが、アイデアが出る場所のことを「3B」と言われているんです。
1,ベッド(Bed)
2,バスルーム(Bathroom)
3,バス(Bus、つまり乗り物の中)
さらに「三上」というものもあるらしくて、
1,馬の上
2,厠の上
3,布団の上
とも言われてます。どちらも似てますよね。
オフィスにいる時はミーティングや作業など何かしちゃうし、例えば、リビングや電車にいると、本を読んだり、インプットする方にいってしまいます。
僕は車を運転しているときにアイデアが浮かぶことが多いですね。アイデアが浮かんだら車停めて吉野さんに電話しちゃったりします(笑)
つまり、アイデアって考えようとして出るものではなくて、ふとした時に出たりするものなんです。その時に思いついたものをパッと書けるデバイスが必要なんですよ。
ジョッターはページを開く起動時間がゼロ
南:ジョッターってなんでこんな普及しないのかなと思っているんです。例えば空港ってもっと効率化できるんじゃないかと。
一同:(空港…??)
南:パスポートの顔写真のページは3枚目にありますよね。空港でパスポートを出すシーンを思い浮かべてみてください。まず、空港に行って、チェックインカウンターでパスポートをめくられて、そしてチケットを発券してもらいます。そしてセキュリティゲートでもパスポートをめくってチェック。そして最後に飛行機に登場する時にもパスポートをめくって確認されます。
このパスポートをめくる作業だけで、1人4,5秒かかっているはずです。それを1日の空港利用者数や年間の利用者数に換算していくと、1人1人パスポートをめくって顔写真のページを確認するのに、相当の時間をかけているはずなんです。だから、顔写真のページがパスポートの表紙にあるだけで、かなり時間を削減されるはずなんです。
(※筆者補足: 1日の空港利用客が10万人利用だとして、4秒×10万人、1回のパスポートチェックで40万秒は27時間、それを3回で72時間分!つまり1日72日時間分パスポートめくられてるって計算になるはず。)
ここでジョッターの話に戻っていくわけなんですが。
だから、普通のノートってもったいないと思っていて、なぜかというと、僕はめくるのが嫌で、自分が今まで書いたノートをめくって開いて閉じるのが馬鹿らしいと思うんですよ。
でもジョッターだとページを開くまでの起動時間がゼロ。
アイデアは思いついた時にその場で書きたいんです。考えながら、説明しながら、記録したい。
思いついた時にパッと書けるからジョッターというスタイルが一番良いと思っているんです。
SKETCH NOTEのこだわったところ
石川:なるほど。革のシールをジョッターを見なすアイデアは究極的でしたが、でも今のSKETCH NOTEのコンセプトでもありますね。SKETCH NOTEのこだわりはどこでしょう?
吉野:「描くところ」と「収納するところ」をどう整理して、より広いキャンバスを得られるか、を大事にしました。数ミリ大きくなるだけで手に収まりが悪くなるので、そのバランスをかなり検討しました。
またFabCafeさんとのコラボレーションということで、レーザーカッターやUVプリンターでの加工のしやすさも大事です。スムーズでフラットな日本国産の革を利用しています。革だとほつれたら修理できますしね。
相樂:UVプリンターのインクと革との相性も良くて、インクが割れずに定着するので、とても綺麗にプリントできます。革の色は、UVプリントの色がきれいに出やすいオフホワイトのが人気がありますね。
吉野:iPhoneのシリーズやサイズが変わっても入るようにしたり、袋部分に余裕をもたせて縫製することでモノを収納しやすくしたり。ジョッター部分は、板の厚みは保存するメモ帳での経験を活かしてますし、紙を挟むパーツはどこまで細くしつつ強度を保ちながら広さをとれるかというのを考えました。
※他にもたくさんの特徴があります。SKETCH NOTEの特徴はこだわりはWebサイトにも詳しくあるのでご覧ください!
(そもそもの)SKETCH NOTEの構想とは
諏訪:実はこのSKETCH NOTEという企画自体は、abrAsusさんからコラボレーションするずっと前からやりたいなーと思いつつ、何回かプロトタイプをつくったりしていたんですよね。
sketchnote.comというドメインも7-8年前からもっていました。(注:諏訪はドメインオタクです)
アイデアを出すときにちょこちょこ書いたりしますが、ロフトワークのディレクターなんかみていると、ビジュアライゼーションができている感じがしなかったんですね。
何ページもある企画書よりも、1枚のスケッチの方が自分のアイデアを語れることもあります。アイデアを可視化するための「描く」と「書く」を共に考え、広めていくプロジェクト、これがSKETCH NOTEのそもそものアイデアです。
FabCafeが2012年にできて、たくさんのクリエイターが集まるような場所もできて、ワークグループやコミュニティもできました。
クリエイターが参加できて、そして実際に「製品」として使えるようなものを作ってみたいな、と思ったところにabrAsusさんに出会ったんです。
南:はい、2年前に諏訪さんからお話を伺った時、ぜひやりましょう!と。
どこまでFabCafeが提案して、どこまでユーザーが参加できるのかがポイントでした。
諏訪:そしてついに実現したプロダクトができました。今見ても、あの時から描いていたコンセプトとぶれていなくて本当に素晴らしいと思います。
arbAsusのものづくりって本当に合理的ですごい
諏訪:
しかし、abrAsusさんみたいにこんなに合理でモノづくりをする人たちは珍しいですよね。
右脳系というか、徹底して合理的で、ロジカルに詰めて、PDCA回して。
僕も小さい財布を2年以上愛用していますが、財布もこんなに長く一種類の財布使ったことがありせん。
南:弊社のプロダクトづくりには、平均1年くらいかけて作っていますね。逆にそれくらいかけなきゃダメだと思っています。
1つの製品を出す毎に100%やり尽くしているからずっとクラシック(だからオンラインストアの名称がSUPER CLASSIC)、廃番はありません。薄い財布を作ったのは7年前ですが、売上は全然落ちてないどころがむしろ上がっています。
うちみたいに1つのプロダクトでサンプルを30回位作るとか、他のメーカーはまずそんなに作りません。出来上がってきたものをぶっ壊して、最初から考えなおすのもプロセスで、プロセスを楽しんでやろうと言うのがテーマでもあります。
今弊社は10人以下ですが、組織のデザインも重要です。
例えば社員が30人〜50人いたら固定費も変わるわけで、そしたら「明日売らなきゃいけないプロダクト」をつくらないといけない。
でも僕は、本当に欲しいプロダクトを、2年でも3年でもかけてつくれるような体制を維持していきたいんです。今のところそれで売れていますから。
諏訪:ロフトワークはクリエイティブなコミュニティと一緒に考えるというクリエイティブエージェンシーです。2000年に始まったloftwork.comは、16年続いているWebサービス。これより古いものはYahoo!とかなんですよ。SketchNoteはアイデアをどうスケッチという一番早い手法でビジュアライゼーションをするか、を皆で考えるコミュニティ。端的に表しているのがこのプロダクトです。
SKETCH NOTEものんびり大事に育てながらやっていきたいなと思います。
これからもよろしくお願いします。
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