Event Report

デザイン思考で考える「SDGs12: つくる責任つかう責任」 WIDDアイデアソンレポート

持続可能な社会を世界レベルで実現するために、2015年9月に国連で決められた世界共通の目標「SDGs(Sustainable Development Goals)」。日本でも2017年頃から、大企業が企業の活動とSDGsを結びつけるなど、広く注目が集まっています。

FabCafeとロフトワークでは、2017年からSDGsをテーマにしたハッカソン「Global Goals Jam」を開催しています。Global Goals Jamは、Digital Society School 国連開発計画 (UNDP:United Nations Development Program) とのコラボレーションで、世界同時多発で行われるイベントです。

<Global Goals Jamのレポート> 
2017年東京2018東京2018京都2018 香港 

そして6/29(土)、FabCafeは、Global Goals JamのスピンオフイベントであるWIDD(ワールド・インダストリアル・デザイン・デー2019・ミニジャム)を開催しました。国際NGOであるWDOが主催するWIDDでは、SDGsの中でも「SDG(持続可能な開発目標)12:つくる責任つかう責任」にフォーカス。デザイナー、エンジニア、マーケターなど様々なバックグラウンドの人たちが参加し、デザインの力で「持続可能な消費と生産」を実現する方法を、アイデアソンで探りました。

1日限り、9時間の短期間で行われるアイデアソン。SDGsのテーマはどれも地球規模の課題であり、一朝一夕で、解決するものではありません。限られた時間のなかで、デザインシンキングのメソッドを使い何が生まれたのでしょうか。

テキスト:鈴木真理子

 

デザインプロセスを分刻みで行なっていく、超集中型アイデアソン

当日、会場のFabCafe MTRLに集まったのは、参加者18名と、ファシリテーター&記録係10名の合計28名。朝11:00に集合し、夜8:00にはプロトタイプの発表を目指すというハードなスケジュールです。

アイデアソン全体の進行をするのはFabCafeでグローバルコミュニケーションを担うケルシーと、ロフトワークのディレクター加藤。アイデアソンの設計や、チームのファシリテーターのトレーニングを担う加藤は、Hasso Plattner Institute of Design Thinking (通称d-school)において、デザイン思考コーチとして学生、社会人の指導を行ってきた経歴を持ちます。

この日のアイデアソンでは、ケルシーと加藤がツールと構成を選び、全体の流れをプランニングしました。使用したツールは、サステナビリティを考えるのに適した、Digital Society Schoolがオープンソースで公開しているデザイン思考のメソッド「Design Method Tool Kit」です。

1日アイデアソンで使ったメソッドと流れをご紹介

11:00 集合

11:00-11:15 イントロダクション11:15-12:15 チーム作り

●SDGs12をテーマに、自分が解決したい課題を考える(ツール:#WWWWWH)
●各自が考えた課題に投票をして、アイデアソンで取り組みたいテーマを4つに絞る(ツール:Dot voting)
●アイデアごとに分かれ、4チーム結成!(ツール: Team Canvas)12:15-14:30  Sprint #1 Discover (発見する)
●サービス/プロダクトの利害関係者を明らかにする(ツール:Stakeholder’s map
●インタビューの内容を考えて、渋谷の街でインタビュー14:30-15:45  Sprint #2 Define (定義する
●Point of view statementを使い、インタビューからインサイトを得る

15:45-18:30   Sprint # 3 Develop (発展させる)
●プロダクト/サービスのアイデアを発展させる(ツール:Concept sketch 
他のグループからのフィードバックを得る(ツール:Through other’s eyes
プロダクト/サービスが使われたときの体験やインタラクションを考える(ツール:Storyboard )19:30-21:00   Sprint #4 Deliver (発表する)
●各チームがロールプレイングで、プロダクト/サービスアイデアを発表!

アイデアソンのゴールをどう設定するか。アウトプットの質より、参加者の「内的な成長」を目指す

当日初めて出会った人たちがチームを組み、それぞれの専門性や得意分野をチームに差し出しながら、「持続可能な消費と生産」の解決策を考える、今回の1日アイデアソン。

短期間で集中して行われるアイデアソンで得られるものは「参加者に”考えるきっかけ”を与え、内的変化を起こすこと」と今回のプログラムを組み立てた加藤は言います。

「1日のアイデアソンでは、質の高いアウトプットが生まれるのは正直とても難しいかもしれません。きちんとビジネスとなるアウトプットが生まれるのは、プロトタイプとそのテストを何度も繰り返してからで、およそ3ヶ月ほどの期間がかかります。1日しかない今回の場合は、ニュースなどで耳にする二次情報ではなく、身近な物事の観察を通じて課題を自分ごと化するきっかけとなればよいと思います。

今回のような短いアイデアソンの一番の目的は、アウトプットではなく、参加者の内的な変化です。会社や学校など自分と同質的な人たちが集まる集団から抜け出し、様々なバックグラウンドの人たちと出会い、チームメイトやインタビューを通じて異質な人たちの価値観に触れることによって、自分のものの見方が変わり、ひいては見るものが変わっていきます。そのことでアイデアソンが終わった後のその人の行動が変わっていくのです。」

参加者のエネルギーを引き出し、「変化」が起きる環境をつくるのがコーチのスキル

アイデアソンの成功の鍵となるのが、ファシリテーションの技術であるコーチング

集まった参加者たちの「エネルギー」を引き出す環境をつくり、「変化」を起こす環境を作ること。自分が心地よいと感じるコンフォートゾーンから一歩出ることによって変化は起こる。普段だったらやらないことをやる、そんな環境を作ってあげるためにまずコーチが率先して行動することが大切だと加藤は言います。今回のコーチは、ケルシーと加藤からトレーニングを受けた、ロフトワークの若手メンバー達が挑戦!彼らにとってもよい成長の機会になったようです。

 

4つのチームが考えた持続可能な消費と生産のアイデアたち

1日の終わり、各チームが1日アイデアソンの集大成としてアイデアを発表しました。1日をやりきった笑顔と、コンセプトスケッチをご紹介します。発表は全て英語で行われました。

Happy fridge  

取り組んだ課題:冷蔵庫の不法投棄をなくする
アイデア:〜Treasures GO!〜
Treasures GO!は、ゲーミフィケーションを利用して、街中に捨てられている宝物を探すアプリ。宝物を探す人、宝物を供給する人、どちらにでもなれる。自分の冷蔵庫や、ランプ、ソファなどの写真を撮影し、自分の家の前におくと、宝物を探す人たちが探してピックアップしてくれる。
https://awrd.com/creatives/detail/8356428

 

Team G7: Everyone’s Closet 

取り組んだ課題: 服をたくさん買ってあまり着ないまま捨ててしまう現象を解消するには
アイデア:〜Everyone closet〜
着なくなった服を集めてリメイクし、シェアするサブスクリプションサービス。着なくなった服がeveryone closetに寄付されると、リメイクが得意な人がリメイクする。会員が駅周辺にあるeveryone closetに行くと、似合う服を選んでもらえ、それを着てそのまま出かけられる。服を寄付した人とリメイクした人は会員のディスカウントチケットがもらえ、みんなで作って使うことで、衣服の生産消費サイクルに影響を与える。
https://awrd.com/creatives/detail/8353948

 

Taste the food

取り組んだ課題:都市部におけるフードロス(食べ物廃棄の無駄)を減らすには?
アイデア:食べ物廃棄の無駄を、楽しく減らすために、スタイリッシュなポータブル弁当箱「Oni-san BOX」をプロトタイプ。分解可能でお掃除も簡単なので、衛生的。協力店舗に「Oni-san BOX」を持っていくと、オーダーミスや賞味期限等の都合で生まれている「捨てるには惜しい食べ物」を、格安・無料で提供してもらえる、というシチュエーションを想定しながら制作しました。
https://awrd.com/creatives/detail/8356058

Cheerful 6: Wear Story 

取り組んだ課題:服の大量生産大量消費問題
アイデア:~Wear Story~
服に紐付いた個人が持つストーリーに着目してリユースを促す取り組み。SNSで自身の服のストーリーをシェアすることで、古着を安く手に入れることが出来るだけでなく、試着室ではその服のストーリーをVRで体験できるサービス!
https://awrd.com/creatives/detail/8355990

休む間もなく次々とデザインプロセスをこなしていくチームを、大変そうだなと思ってみていましたが、終わってみると参加者はみんな笑顔。話をきいてみると、疲れることなく充実した時間だったという声が多く聞こえました。9時間という短い時間の中でそれぞれが成長した時間だったのではないでしょうか。

9月にはGlobal Goals Jam2019を開催。アイデアソン/ハッカソンという方法を通じて、世界の課題の解決を目指し、またひとりひとりが成長する機会となるでしょう。

Comments: