Event report

2018.12.14

語りBar 「飛騨を面白くする人たち、その活動」イベントレポート

FabCafe Hida 編集部

FabCafe HidaのFabマシンを使って、
ここに訪れる方々の ものづくりサポートをしている堀之内です。

今回はそんな私がFabCafe Hidaで司会進行をさせて頂いたイベント、
語りBar-飛騨を面白くする人たち、その活動-」の様子をご紹介します。


飛騨古川や高山、このFabCafe Hidaで出会う人々…
FabCafe Hidaは小さな街の商店街にあります。近所のおじいちゃん・おばあちゃん、お子さん連れでカフェに来てくださる方から、海外からの旅行客、職人や建築家、ゲストハウスのオーナー、移住して飛騨でお店を開かれた方など幅広い層が訪れてくださいます。
普段は近くにいる方でもお互いの活動や暮らしについて、根掘り葉ほり聞く機会はあまりないと思います。「語りBar」では、改めて面白い活動をしている方々をゲストにお招きし、話をゆっくり聞いたり、語り合う機会をつくろうと企画したイベントです。今回は、5人のゲストによるショートプレゼンをしていただきました。

 


 

広島焼き 「えん」店主
高原直也(Naoya Takaharaさん

1989年12月17日生まれ、広島県尾道市出身、尾道観光大志。
株式会社ONOMICHI U2退社後、地元の魅力を発信する為、全国をヒッチハイクで行脚。その際、前職の出張で初めて訪れた、飛騨古川に再訪し移住を決意。旅の途中にお会いした八ツ三館の池田さんに誘われて、飛騨古川にやんちゃ屋台村にて◯“えん”という名の広島焼き屋を開業。先月、飛騨と尾道を繋げる第一歩のイベント「尾道デニムキャラバン@飛騨」を開催。来年OPEN予定の宿(やまなみ)をDIY中。現在に至る。


▲バックパッカー時代を紹介している様子

高原さんはヒッチハイクで日本一周をしている途中、FabCafe Hidaのゲストハウスに約2週間滞在したことがあり、FabCafeともご縁の深い方。
旅の途中で飛騨古川の場所を好きになり、昨年ついに移住を決意しました。今では「なおちゃん」の愛称で親しまれています。
その後すぐ彼の地元のソウルフードの広島焼き「えん」を開店。今ではその味が古川の人々のお口を虜にしていいます。


今年は彼の地元の尾道市にある備後地方のデニムと尾道のまちの魅力を世界に発信している
尾道デニムプロジェクトと飛騨市を繋ぎ、飛騨古川で尾道デニムキャラバンin飛騨というイベントが行われました。
飛騨の木工職人、フォレスター、写真家など、飛騨市で働く方々にワークパンツとして一年間穿き続けていただき、ユーズドデニムを育てるプロジェクトと、飛騨と尾道の食やものづくりを体験できる2日間のイベントが開催されました。
高原さんは飛騨と尾道を繋ぐ男でありたいと語ります。


▲(左)飛騨古川のシンボルの一つ「円光寺」で行われた「尾道デニムキャラバンin飛騨」の様子。
(右)FabCafe Hidaとコラボした飛騨の木×尾道デニムのカトラリーセット

新年度にはバックパッカー時代の経験を生かして、飛騨古川駅前にゲストハウス「やまなみ」を開業予定だそう。商店街がまた一段と面白くなりそうです。


 

次の登壇者は東京からのスペシャルゲスト、

内閣府地方創生推進事務局
内閣官房まち・ひと・しごと創生本部事務局 参事官
高山 泰  (Yasushi Takayama)さん

旧建設省入省。直前の帰省時に阪神・淡路大震災を経験、入省後に復興再開発に対する住民の意見陳述等で現場に向き合う。道路公団民営化、サービス付き高齢者住宅の企画に携わるほか、鳥取県庁出向時はローカル鉄道の上下分離による存続に注力。最近では人口減少時代の都市政策としてコンパクトシティ、都市農地の保全、都市のスポンジ化対策、エリアマネジメントなどに従事。2018年から現職。

 

国が取り組む「地方創生」をテーマに、
まずは
Re:廃校プロジェクトの動画を紹介して頂きました。また、過疎化した町を創世させるプロジェクトの取り組み例として、「隼Lab.」「シラハマ校舎」、地域の資源を活かした取り組みのひとつとして、岡山県西粟倉村の村ぐるみで森林管理を行っている「百年の森林(もり)構想」事業、森の再生を雇用に繋げる「西粟倉森の学校」のお話がありました。
こういった活動に共感した若者を中心とした移住者がローカルベンチャーを次々に企業している流れや、マーケティング、販売促進、商品や経営企画など事業拡大を測る工程を担う人事は大都市に集中しているとして、地方でも取り入れる仕組み、「Skill Shift」「SMOUT」といった取り組み例をご紹介頂きました。

 

中でも、高山さんが最後にお話いただいた日本の環境問題の根にある「文化の病」というお話に会場がとても引き込まれました。

飛騨古川には今も人のあたたかさがあります。進学や就職の為に地元を離れる若者がいる中、飛騨の森や木に携わる仕事に、匠の技術を学ぶ学校もあり県外から移住される方も多くいらっしゃいます。
この街には、木という素材に真摯に向き合う人々の流れがあると再認識しました。
森に入って森の様子を見守る人、間引いた木を製材する人、それを素敵な家具やデザインに加工する人、それを使おうと意識する人。
身の周りの美しさは、いろんな専門家の手が加えられて成り立っていることに、私は改めてこの街に生まれ育ったことをとても誇りに感じました。
(高山さんのお名前が隣町の飛騨高山と同じである事にご縁を感じます。)

 


そして次のトークゲストは飛騨高山から、

浅野翼建築設計室 主宰 / co-ba hida takayama 運営
浅野 翼(Tsubasa Asano)さん

1982年岐阜県高山市生まれ。宮崎駿に憧れて芸術大学を目指し、荒川修作をきっかけに建築デザインの道へ進む。 名古屋市の設計事務所で実務経験を積んだのち、思い立って一年間のぶらり旅に出発。 旅の最中にふと独立を決意、いてもたってもいられず旅先から開業届を郵送し2014年に浅野翼建築設計室を開設する。 多くの建築空間を設計する傍らで、コワーキングスペースco-ba|HIDA TAKAYAMAの運営、無垢の木によるキッチンプロダクト開発、木にまつわる教育イベント「木とことフェスタ」の主催なども行う。

浅野さんはこのトークにあたり、イベントのタイトル「飛騨を面白くする人たち、その活動」から「面白いって、なんだろう?」を考えました。

浅野さんの活動する「浅野翼建築設計室」は「DIYの推奨/DIYイベントの開催/工具レンタル」を構想に加えています。「co-ba| HIDA TAKAYAMA」は「メンバー交流会/ たくさんのイベント/仕事の紹介」ができる場。そのほかにFabCafe Hidaでも展示をしていただいた「Citonel Kitchen」は「使用者が組換え可能なキッチン」になっていたり、「木とことフェスタ」は「木にまつわる教育、参加型のプログラム」をコンセプトにしています。

例えば上記のように、
自分がしたいことをやってみたら、面白いと感じて、それをやり続けたらいつのまにか街全体が面白くなっていた。なんてことも起こるかもしれない、「地域の『おもしろさ』は与えられるものではなく関わりあいながら、つくるもの」ってなると面白いなと感じます。
と、浅野さんはにこやかに語ってくださいました。

 


 

▲休憩時間、飛騨の素材を使ったフードや地酒をいただきます。
お子さん連れやお隣の富山県から団体で来てくださった方もいらっしゃいました。

 


主催トークとして飛騨の森でクマは踊るから代表の林が登壇しました。

株式会社 飛騨の森でクマは踊る 代表取締役社長
林 千晶(Chiaki Hayashi)

森林再生とものづくりを通じて地域産業創出を目指す官民共同事業体「株式会社飛騨の森でクマは踊る」を岐阜県飛騨市に設立。
グローバルに展開するデジタルものづくりカフェ「FabCafe」、素材に向き合うクリエイティブ・ラウンジ「MTRL(マテリアル)」、クリエイターとの共創を促進するプラットフォーム「AWRD(アワード)」などを運営。

「ヒダクマの夢」を語ります。
飛騨市は日本の中でも土地の90%を森林が占めています。
飛騨の森の70%は広葉樹が占める珍しい森です。私たちの宝物である美味しい水やきのこなどの恵み、美しい景色の森を保持する際に、間引いた小ぶりな幅の木(小径木)の多くは、燃料としてチップ状になり燃料として使われてきました。
何十年も森で育った木が、合理的な考え方だけで、捨てられたり、砕いてチップにしてしまうのは悲しいと感じています。

飛騨の森の恵みである美しい木目や特徴を生かし、広葉樹が刈り取られた後は燃料としてだけではなく、素敵なプロダクトとして生まれ変わる。
デザイナーや建築家にこの場所に来て欲しい、せっかくならこの少し長く泊まって
いろんな視点からものを見ていただくことで、もう一度、違う角度で見える世界があると考えています。

きっとひとりで活動するよりも二人の方ができることは多くなる…今回の「語りBar」のように、集まることで生まれる様々なアイデアや、人々、場所と繋がることをこれからも続けて行きたいです。

 


最後のゲスト、

ゲストハウス MOTHER’S HOUSE オーナー/ベーグル職人
小倉 夕子( Yuko Kokura )さん

ベーグル好きなら誰もが知るベーグル専門店「BAGEL&BAGEL」に15年間勤務。ベーグル製造・店長・新人育成・オープニングマネージャー・エリアマネージャーなど、幅広い業務に携わる。
2017年4月より、祖母から譲り受けた古民家を改築し、飛騨古川でゲストハウス「MOTHER’S HOUSE」を運営。飛騨の伝統やおもてなしを大切にしたアットホームな宿泊とレンタルスペースとして利用されている。ゲストハウスの傍ら経験を活かしベーグル教室やケータリングも行っており、今後も拡大予定。

マザーというニックネームで親しまれている小倉夕子さん。今飛騨古川で話題のベーグル文化の発端はきっとマザーのベーグルの存在が大きいでしょう。
「マザベ(マザーのベーグルの意味)」の愛称で呼ばれる、ベーグル教室をご自身のゲストハウスで開いています。今では小学校から依頼があるほど大人気。


添加物を使わない、飛騨の素材や自然が持つ色で彩り、カラフルな見た目と美味しさで、ケータリングでも引っ張りだこの小倉さん。FabCafe Hidaでも海外から来られたデザイナーや学生さんの合宿を行った際に、毎日の朝夜のご飯を作ってくれました。
小倉さんの料理は世界共通です。母国に帰るフライト前に彼らから届いたメール「I missed mom’s food. 」の言葉は忘れられません。


▲MOTHER’S HOUSEは古民家をリノベーションした囲炉裏や和室のお部屋のある素敵なゲストハウス。

国内だけではなく、特に海外からのお客様が次々に訪れます。
「MOTHER’S HOUSE」は、元は小倉さんのお母さんのお家だったものを今でも木工の仕事をしているお父さんと一緒に建具から仕立て直したんだそう。お父さんは、改修だけでなく、いつもマザーが提供しているお料理に使われている美味しいお野菜を作っています。


▲マザーの周りに集まるのはお子さんから、おじいちゃん・おばあちゃん、
海外から泊まりにくる方まで様々。小倉さんの見せてくださった写真はみんな素敵な笑顔です。

マザーの人柄がみんなの笑顔を自然に引き出しているのが分かります。最後にマザーはまだまだ頑張りますよ!と語りました。


そして今回のイベントのケータリングはマザーが担当。そのメニューボードは、FabCafe Hidaの木工場にある端材で、作らせていただきました。(次回使う時は表面を削って、レーザカッターで彫刻すれば何度でも使えます。)

今回はゲストを含め約30名の方にお越しいただき、ありがとうございました。
交流会も盛り上がり熱い夜となりました。

次回の「語りBar」は12月22日 18:00~21:00です。トークゲスト情報も随時更新しています。


 

語りBarとは:

飛騨をもっと面白くしようと活動している/したい人集まれ!
語りBarは、先陣を切って、飛騨の中でこの土地の魅力を発見し発信している人を毎回数名ゲストにお招きし、ゲストのショートプレゼンテーションを聞いて、美味しいお酒と食事を楽しみながら、語り合うネットワーキングイベント。
集まった人々が、明日からの行動指針を見つけたり、応援し合える仲間を見つけたり、自身の活動を相談したりできます。
きっと一人で活動するよりも二人の方ができることは多くなります。
たくさんの応援があればあるほどやり甲斐が生まれます。
このイベントが、地域内外の人々との交流により、横の繋がりが自然と生まれる機会になればと願っています。
「語りBar」をこれからも継続していけたらと思いますので、その際はどうぞお気軽にご参加ください。

 


最後に、当日の会場に飾っていたお花の紹介。
近所の華道家の先生に教えていただき、スタッフも初めてお花を活けました。

FabCafe Hidaでは「森の勉強会」「木とデジタルマシンのWS」などを定期的に開催しています。
最新情報は随時アップしますので、FabCafe HidaのWebサイトをチェックしてくださいね。

執筆者:堀之内里奈

飛騨古川出身。「FabCafe Hida」がFabや木工を知るきっかけになりました。
地元出身の目線で飛騨の魅力をおいしく、楽しく、分かりやすく知っていただくきっかけを作ることが毎日の楽しみです。

Our company:株式会社 飛騨の森でクマは踊る

木の可能性、森の可能性、地域の可能性、
脈々と継承されてきた日本人の暮らしの可能性。
“ヒダクマ”はそんなありふれた日常に潜む大きな可能性から、新しい価値を生み出すことを日々探求しています。

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