Column

2022.1.31

【Coffee Magazine】Costarica La Candelilla ホタル棲む渓谷の七兄弟

Costarica La Candelilla
コスタリカ ラ・カンデリージャ

大西 陽

FabCafe Tokyo / MTRL

FabCafe Tokyoでは世界中の色々なコーヒー豆を、様々なロースターさんたちを通じて定期的にご用意しています。

一杯のコーヒーの背景に広がる様々な物語を皆様にお届けします!
このブログを通してFabCafe Tokyoのコーヒーに興味が湧いたり、コーヒーが好きになってくれたら幸いです。

皆さんのFabCafeでのコーヒーライフがもっと素敵な時間になりますように!

Costarica La Candelilla
コスタリカ ラ・カンデリージャ
ホタル棲む渓谷の七兄弟

中央アメリカ南部に位置するコスタリカはコーヒーの名産地として知られている。
国土の約70%が火山に囲まれ、大きな寒暖差、豊富な水資源、水捌けのいい火山灰の土壌はまさにコーヒーの栽培に最適な環境だ。環境だけではなく国策として1992年からアラビカ種のみの栽培が法律によって定められ、ロブスタ種の栽培が厳格に禁止されている。そういった環境や施策によりコスタリカはコーヒーの全生産量の50%がスペシャルティーコーヒーだといわれるほどのコーヒーの一大産地であり、コーヒー生産の先進国の1つであることは間違いない。そんなコスタリカの中でも小さな町で7人の兄弟が運営するひときわ光彩を放つ農園がある。

今回のコーヒーの舞台はコスタリカ南西部の山々に囲まれたタラス地区で精製を行う「ラ・カンデリーシャ」だ。
ラ・カンデリーシャの周りには豊富な水源、雄大な山々、なだらかな丘陵、緑豊かな渓谷、息を呑むような景色が美しく広がり、激しい寒暖差、乾季と雨季による明確に分かれた気候は風光明媚な森林を万華鏡のように変化させる。夏の夜には小川をホタルが照らすほど、美しく豊かな自然に囲まれた地域として知られている。

カンデリージャはそんな小川を照らす「ホタル」を意味し、地元の人々は美しい水源に囲まれたこのホタルが棲む地域を「カンデリージャ(ホタル)」と呼んでいたことから精製所を「ラ・カンデリーシャ」とエンナルデンス家の7人の兄弟が名付けた。

エンナルデンス家は1900年頃から5世代に渡ってこの土地で農業を行い、コーヒーは50年以上同じ地域で生産していた。ラ・カンデリーシャを設立する以前はそれぞれの兄弟が別々に土地を管理し、協同組合が管理するウェット・ミルにコーヒーを納め、加工していた。しかし2000年に先代から代々受け継がれてきたこの美しい地域を高品質のコーヒーで守っていきたいという想いから、コスタリカで最初のマイクロミルの1つとして自分たちの精製所「ラ・カンデリージャ」を設立した。7人の兄弟はそれぞれ2、3軒の小さな農園を所有し、それぞれが収穫したコーヒー豆をこの精製所で精製している。

精製所を設立して以降、彼らは高品質のコーヒーを生産し続けるために様々な挑戦を続けている。
豊富な水資源と、恵まれた気候によって高品質のウォッシュド、ナチュラル、ハニープロセスをはじめ、
近年では新しい精製方法の1つである「嫌気性発酵(アナエロビックファーメンテーション)」も採用した。
またカトゥーラ、カトゥアイ、ティピカ、ゲイシャ、SL28など、さまざまな品種を栽培し、実験も行った。

もちろん、タラス地区の美しい自然を守るために環境にも配慮し、
ウェット・ミルのパルプは一区画に積み上げられ、有機肥料として使用し、
一部化学肥料も使用するが、害虫に対してはバイオダイナミック農法で対処している。
その土壌は毎年国立研究機関Icafeにサンプルを送り、その結果に基づいて施肥や植え付けなどを調整している。
20年以上のこのような経験と絶え間ない改良・改善を重ね、その品質が認められ、現在では多くのコーヒー生豆を生産し、世界中に輸出するまでに広げることに成功した。

ラ・カンデリーシャは先祖から親へ、そして7人の兄弟へと代々受け継がれた。
そして彼らも父親となり、現在は子供たちとこのホタル棲む美しい渓谷を守りながら次の世代へと受け継いでいる。

近年、気候変動による不作や環境問題による食料汚染、人口増加による食料危機など様々な暗いニュースを聞く中で、
彼らの質の高いコーヒーを通したタラス地区の伝統と美しい自然を次の100年先まで守る試みは、
これからのスペシャルティコーヒーのあり方を示唆するのではないだろうか。

是非、彼らが生産するタラス地区のホタルが棲むような美しい風景を思い浮かべながらお楽しみください。

 

FabCafe Tokyo バリスタ
大西陽

生産地 Costa Rica San Lorenzo, Tarrazú
グアテマラ タラス サンロレンソ区
精製所 La Candelilla Micro-Mill
標高 1,400 – 1,600m
精製方法 Washed
品種 Caturra (カトゥーラ)
焙煎 LIGHT UP COFFEE
コメント ウォッシュドらしい爽やかで瑞々しい青リンゴを思わせるようなクリーンカップでありながらも、
華やかさの中にオレンジや蜂蜜のような甘さを楽しむことができます。
特にホットのエアロプレスでは温かい時にはコクのある甘さ、冷めていくと徐々に綺麗な酸味に変わり、
味の変化を楽しめるようなコーヒーです。
  • LIGHT UP COFFEE

    おいしいコーヒーで、 毎日を明るく照らす

    LIGHT UP COFFEEは、栽培・収穫・精製に手間をかけてつくられた、個性あふれるシングルオリジンコーヒーを仕入れ焙煎し、日常に根付くようお届けしています。

    おいしいコーヒーがあることで1日が少し明るく感じる、そんな豊かな毎日をコーヒーを通してお伝えしています。

    URL : https://lightupcoffee.com/

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Author

  • 大西 陽

    FabCafe Tokyo / MTRL

    ヨーロッパを中心にファッションデザイナーとして活動後、2012年帰国。
    複眼的な視点を持ったデザインを行いたいという想いから、分野の垣根を超えた接点を持つ食の分野に興味を抱く。2014年よりFabCafe Tokyoでディレクター、リードバリスタ、コミュニティマネジャーとして勤務し、FabCafeに集まる多種多様なコミュニティと多くの企画やプロジェクトを立ち上げる。

    担当プロジェクト
    bugology Space Mongology fruitful BUGOLOGY  beyond cacao  THE OYATSU  OLFACTORY DESIGN LAB

    ヨーロッパを中心にファッションデザイナーとして活動後、2012年帰国。
    複眼的な視点を持ったデザインを行いたいという想いから、分野の垣根を超えた接点を持つ食の分野に興味を抱く。2014年よりFabCafe Tokyoでディレクター、リードバリスタ、コミュニティマネジャーとして勤務し、FabCafeに集まる多種多様なコミュニティと多くの企画やプロジェクトを立ち上げる。

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